嵯峨幼稚園

◆ 藤本明弘 園長先生 インタビュー (2012.6.13)

 


2012年 6月13日

今日は、京都嵐山にある「嵯峨幼稚園」の藤本明弘園長先生に、「幼保一元化」の問題について、お話しを伺って参りましたので、ご報告いたします。藤本明弘園長先生は、京都府私立幼稚園連盟理事長も務めていらっしゃいます。



CIMG3922藤本 明弘 嵯峨幼稚園園長・京都府私立幼稚園連盟理事長


藤本明弘園長先生が、「幼保一元化」について書かれたものをご紹介いたします。

子ども・子育て新システムの課題

(社)京都府私立幼稚園連盟
理事長 藤本 明弘

まさに今、子ども・子育て新システム関連3法案が本通常国会において審議されています。消費増税案や政局との微妙な水面下での駆け引きもあり、行く末は全く不透明ですが、一時たりとも目が離せない状況です。

全日私幼連では4月12日付けで7項目からなる、重要課題を提言(全日私幼連HP参照)していますが、ここから読み取れることがらは、この法案は、 子どもの健全な育ちという視点が全くない上に、我が国の現在までの教育制度の歴史や精神を極めて軽視した、非常に唐突な話に他ならないということです。

例えば総合こども園には株式会社が参入することが可能となります。確かに既に社会福祉の分野には株式会社が参入できますから、今日的な社会情勢の流 れとは言えましょう。しかしこの先には重要な問題が存在します。つまり、満3歳以上の総合こども園は全てが「学校」として認められるようになるのです。 従って、株式会社が設立した総合こども園も、れっきとした学校というお墨付きをもらえることになります。

これは学校制度の誕生以来、永年に渡り我が国の学校教育を支え続けてきた根幹法である「教育基本法」の精神を全く無視した、信じ難い法解釈です。な ぜならば、我が国における教育施策は「教育基本法」を頂点として、その中に「学校教育法」が包括されています。そして、学校は言うまでもなく「学校教育 法」の第一条に規定されています。またその第二条には学校は、国、地方公共団体及び私立学校法第三条 に規定する学校法人のみが、これを設置することができる。と明確に規定されているのです。このことからも明らかなように「教育基本法」→「学校教育法」と いう正しい流れの法解釈では、株式会社が学校を設立することは不可能なのです。

そこで政府案は非常に不自然な形で法的根拠を創り上げています。つまり、教育基本法の第六条に学校教育に関する規定があり、「法律に定める学校は、 公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。」という条文を利用し、株式会社の総合こども 園も、総合こども園法で定めた「学校」であるから、教育基本法の第六条が適応されるという訳です。

まさしく法の 網の目をかいくぐった解釈という表現がぴったりです。いかなる分野でもこのような手口は決して感心したものではありませんが、ましてや、一国の将来を担う 子どもたちを育む幼児教育の世界に、こともあろうが政府自身がこのような手法を用いること自体が、幼児教育重視の世界の流れからは、 極めて貧しく、恥じるべき発想と受け取られても仕方ないでしょう。

今私たちが出来ることは、とにかく議論の行く末を注視することにつきますが、だからこそ、様々な問題点を共有し、私たちの思いを一つに束ねていくことと感じます。皆様の更なるご理解・ご協力を何卒よろしくお願いいたします。

                                                   2012年6月1日



CIMG3942嵯峨幼稚園
嵐山 天龍寺のすぐ近くでした。

嵯峨幼稚園のホームページはこちらをご覧ください。

CIMG3941自然に恵まれた幼稚園です。裸足で遊べます。

藤本 明弘理事長先生のお話をご紹介します。

「京 都府私立幼稚園連盟には、現在153園が加盟していて、府内ほぼ100%の私立幼稚園が加盟していることになります。153園には、それぞれ建学の精神が あります。宗教上の違いだったり、経営母体の違いだったり、色々とありますが、その違いを認め合い、その違いを尊重している団体です。その精神が、子ども 一人ひとりが違っていて良いという思考に通じていると思っています。ここが、一番大切な保育のスタートラインではないでしょうか。

「幼 保一元化」の問題についてですが、「幼児教育」について国政レベルで話し合うことは非常に喜ばしいことだと思います。全国の私立幼稚園連盟でも、これから 先の保育は社会や時代のニーズに合わせていかなければならないことはわかっていますので、ただ、既存権益を守りたいとか、経営的な側面で「幼保一元化」に ついて反対しているのでは決してありません。

そもそも、保育園の待機児童を解消することが「幼保一元化」の発端だったと思うのですが、そ れからの議論の展開をみてみますと、「子育て」に真剣に向き合った議論ではなく、母親を日本経済の発展のため、産業界の働き手とするために、子どもを引き 離して「総合子ども園」(仮称)に集め、子育ての肩代わりをしようとしているように思えます。これに対して、私たちは子どもの立ち場から、反対してきまし た。

社会のゆがみが幼児に押し寄せてきているように思います。子どもの目線ではなく、大人の利便性のために、「幼保一元化」の議論が行わ れているとしか思えません。幼児期に必要な保育・子育てが何かは、多種多様なニーズがあってすべてに応えるのは難しいのですが、子どもの健全な育ちのため に議論してほしいのです。そして、もっと、現場の意見に耳を傾けてほしいですね。

子育ては、親から引き離すよりも、適切な環境を与えるこ とができれば、子どもは自力で育っていくものなのです。そして、子どもが育つと同時に、大人が「親」になっていくのです。そのプロセスは「人間」にとって 大切な大切なプロセスなので、子育ての悲喜こもごもを親から取り上げるのではなく、親も子も一緒になって「人間」として成長していくべきだと思いますね。

いま、目の前にいる子どもが、子どもらしい今を満喫してほしいです。
子どもとして、今を生きてほしいです。」

藤本明弘園長先生、ありがとうございました。

 

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「嵯峨幼稚園」のホームページの中になる文言で、いま、子育て中のお父さま、お母さまにどうしてもご紹介したい藤本園長先生の言葉があります。

小さいお子様をお持ちのお父さん、お母さんへ

 

自分の自由な時間はなくても、一日のほとんどをわが子と一緒にすごしているお母さんたち。

そして、子育てを人任せにしないで、悩みながらも一生懸命子どもに向き合っているお母さんたち。

仕事が忙しくてなかなか子どもと遊ぶ時間がないけれども、わが子に思いを抱いているお父さんたち。

わたしたちはこんなお母さんたちやお父さんたちを心から応援しています。わたしたちの考える「子育ての支援」は子育ての大部分をお母さんやお父さんから奪 い取る「肩代わり支援」ではありません。うれしいとき、楽しいときはもちろん、しんどいときやつらいときも私たちと一緒に手をつないで歩いていきましょ う。100パーセントの母親や子育てを目指 すのではなく、自分らしさを大切にしながら、私たちと一緒に階段を一段ずつ登っていきましょう。

 

 

 

CIMG3925           年少児さんの教室。椅子がちっちゃい!

 

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             水の中に靴が片方入ってました。
      (我が子の靴だったら、ちょっと嫌かも・・・)

「幼保一元化」は、いろいろな問題を含んでいるようです。
それぞれの立場で、それぞれのご意見があると思います。


「子 どもが私の言うことをちっとも聞かないのです。」というお悩みを持つお母さまが増えています。そこで、母子の様子をじっと拝見していますと、お母さまが子 どもの話を聞いていないことに気付きます。指示は出していますが、子どもの話は聞いていません。話を聞いてもらっていない子供は、人の話を聞きません。そ れは当然のことです。自分の話を聞いてもらっていないのですから、人の話を聞く気持ちにならないのは、当然だと思います。 

話 を聞いてもらうという事は、心のキャッチボールをするという事です。でも、そのキャッチボールの経験が少ないお子さんは、どのようにボールを受け取れば良 いのか、わかりません。幼児期の会話不足・心のキャッチボール不足は、その後の人格形成において、重大な影響を与えると思います。心のキャッチボールので きる人は、周囲に大切にしてもらった人であり、人を信用することを知っている人であり、人のために何かをなすことを厭わない人となり、感謝することを知っ ている人になると思います。

幼稚園であろうとも、保育園であろうとも、総合子ども園 (仮称)であろうとも、子どもの話をしっかりと聞いてあげる人がいる環境を整えることが大切です。そこが、これからの時代を担っていく社会人を創る「核」 だと思います。「幼保一元化」問題は、子どもの心をまっすぐに育てるには何が必要なのか、また、そうでなければどんな世の中になっていくのかをしっかり考 えて議論していかなければいけない問題だと思いました。

 


藤本 明弘園長先生への取材は5月28日(月)に受けていただきました。

昨日6月12日の毎日新聞の記事です。幼保一元化問題に展開がありそうです。ご覧ください。



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